川崎剛一のゲーム体験記

ゲームの話を中心に書きます。

ファイアーエムブレム無双

概要

ファイアーエムブレム無双』はコーエーテクモゲームスから2017/09/28に発売されたアクションゲームである。対象機種はSwitch/3DS。筆者はSwitchでダウンロード版を購入した。

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近年のFEの顔になりつつあるルキナ

ファイアーエムブレム』のこと

ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』が1990年に発売されてから今日まで27年、家庭用ゲーム機向けで実に16本*1ものタイトルが発売されている長寿シリーズである。その登場キャラクターは敵味方合わせて1000人近い。これらを網羅せよというのも酷な話ではあるが、『ファイアーエムブレム無双』の参戦作品として主に直近2作の『覚醒』『if』および初代『暗黒竜と光の剣』から採用されている。シリーズの大部分――とりわけ筆者を熱狂させた『聖戦の系譜』――が採用されていないのは悲しい話だが、『ファイアーエムブレム』シリーズにまつわる事情、すなわち『覚醒』で終わるかもしれなかったという事情を鑑みてしまえば、納得せざるを得ないところでもある。

山上

当時の営業本部長の波多野(信治)さん(※27)から、
「『エムブレム』シリーズは、数字があまり出ないから、
 これが最後だぞ」と言われて、メンバーにも
「もうこれで終わりと言われたから、
 悔いのないように、やりたいことを全部詰め込もう」
と言って、「おれはこれがやりたい」
「自分はこれがやりたい」というのを積み上げていって、
その結果できたのが『覚醒』だったんです。

社長が訊く『ファイアーエムブレムif』|ニンテンドー3DS|Nintendo

結果的に『覚醒』は順調に売上を伸ばし、『if』も好調。『ファイアーエムブレム』はここで息を吹き返したと言ってもいいだろう。いちファンでしかない筆者が売り上げのことを気にしても仕方がないのだが、納得の行く『理由』を導き出せるのはこのシナリオだけである。

『無双』のこと

一方の『無双』は、『ファイアーエムブレム』と比べれば歴史は浅いものの、2000年*2から脈々と続く人気シリーズである。我々のような中年ゲーマーよりもう少し下の(すなわち、初めて触ったゲーム機がプレイステーションであったような)世代にとっては共通言語とも言えるシリーズで、こんにちではどこでも通用する「無双する」という言い回しの語源でもある。コーエーの代表作である『三国志』・『信長の野望』を由来とする『三國無双』/『戦国無双』シリーズを柱とし、それらを融合させた『無双OROCHI』シリーズ、あるいは『無双スターズ』もあるが、中期から『ガンダム無双』シリーズ、近年でも『ワンピース 海賊無双』シリーズや『ベルセルク無双』などコラボレーションにも精力的である。2014年には『ゼルダ無双』をリリースしているが、今回書いている『ファイアーエムブレム無双』は、この『ゼルダ無双』の流れを汲むものである。
こんにち、既に『無双』は単一のシリーズを指す言葉ではなく、一種のジャンルとして認識されている。無双の名前でなくとも『NINETY-NINE NIGHTS』は無双であったし、『戦国BASARA』も無双であった。であるので、これらを「攻撃ボタンをスカムしているうちに終わるゲーム」で終わらせてしまうのは野暮であろう。でも実際はそうやって終わるんだろうなと考えていた筆者の思惑は、良い意味で裏切られることになる。

ゲームプレイ

ゲームの根幹は『無双』のそれなので、確かに攻撃ボタンをスパムするゲームではある。複数のキャラクタを使い分けるという意味では『戦国無双クロニクル』シリーズに近いと言える。そこに一捻りを与えてくれるのが『ファイアーエムブレム』に由来する3すくみのシステムである。一応書いてしまうと、3すくみは「剣は斧に強く、斧は槍に強く、槍は剣に強い」という原則を基本とする『聖戦の系譜』以降のシリーズで採用されているシステムである。魔法など遠距離武器に関してはシリーズ毎に扱いの差異があるが、本作には暗器が存在しないため、『新暗黒竜』ないし『覚醒』の3すくみが採用されているとみてよいだろう。

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出撃前画面。ここでまずおおまかな方針を決定する

各マップは剣の敵が多いとか斧の敵が多いとかという大まかな傾向があるため、これに合わせてキャラクタを出撃させ向かわせる。戦闘中も敵の増援が出たり、増援を召喚する魔道兵が出てきたりするので、味方に細かく指示を出しながら対応していくというわけだ。

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戦闘システムは無双のそれ。年に一度程度なら楽しい

正直なところ、わかっていて不利な味方を出撃させているのでなければ、有利な相手に有利な相手をぶつけていくだけなので、頭を使う場面というのはあまりない。しかしながら、指示を出さなければ味方は本当に適当な動きしかしない(いきなり敵本拠地に突っ込むなど)ため、絶えず味方の陣地や敵の配置などを確認しながら指示を出し続けていくことになる。敵のネームドはそこそこ強く、AIに任せていると時間がかかったりするので、その場合は操作キャラを切り替えて対応する。敵のネームドが2拠点に攻めてきたら片側にAIを集中させて操作キャラでもう片方を対処…など。これがゲームプレイに適度な忙しさを与えてくれて、通して程よい緊張感を維持したまま遊ぶことができる。

キャラクタ

本作は『暗黒竜と光の剣』『覚醒』『if』を中心にキャラクタが登場していると先に書いたが、他に『echoes』のセリカと『烈火の剣』のリンが登場している。彼女らはシナリオモードに絡んでくることはない、いわばボーナス的な扱いなのだが、まずは出たことを喜ぶべきだろう。セリカは現時点での最新作であるという理由がわかるが、リンについては理由が2017年初頭に行われた英雄総選挙(『ファイアーエムブレム ヒーローズ』英雄総選挙 結果発表)以外に考えられず、つまりこのままシリーズが続いてくれればアイクやロイ、ヘクトルが出る可能性が高いと思われるからだ。筆者の愛した「フォルセティを持ったアーサー」は…290番目だが。まあいいではないか。
本作のキャラクタはよく喋り、よく表情を変え、よく動き、非常に魅力的なので、このクオリティでかつての彼らを蘇らせてほしいと考えるのは仕方がない。幸いなことにゲームそのものが非常に良い出来で、存分にキャラクタを愛でることができるのである。

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貴重な歩兵の斧使い。重要度の非常に高い妹

バランス

最後にバランスに触れないわけにはいくまい。本作は上で述べたように3すくみを採用しているが、上で触れなかった弓・魔法・竜石は3すくみの外の存在として、どの兵種に対しても強い補正が働かなくなっている。しかしながらバランスは「3すくみで有利に立つ」ことを前提として取られているようなので、有利に立てない弓・魔法・竜石のキャラクタの優先度がどうしても低い。
さらに言えば剣の多さである。

種別 人数
10
3
3
3
魔法 3
竜石 1

弓と魔法は使いづらく、斧は素直な歩兵がリズのみだし、槍に至っては3人ともペガサスナイトである。『ファイアーエムブレム』は全体的に神剣をもつ王家の者(ロード)が悪い竜を倒すというベースラインを大きく外さないため、何も考えなくても、あるいは最大限考えても剣が多くなるのは仕方のないことなのだが、それにしてもそれ以外の扱いがあまりよくない。登場を望まれるとすれば槍使いの歩兵、すなわち『聖魔の光石』のエフラムあたりだろうか(『if』の槍使いオボロのモデルは既にあるようだが…)。
手触りが非常によいだけにこのあたりの偏りが気になるもので、このあたりはDLC、あるいは続編で綺麗に解決されることを願いたい。

*1:幻影異聞録♯FE』は含んだが、『ヒーローズ』や『スマブラ』、『PXZ2』は含んでいない

*2:事実上の初代といえる『真・三國無双』の発売日