川崎剛一のゲーム体験記

ゲームの話を中心に書きます。

ランス10

『ランス10』はアリスソフトから2018/02/28に発売された大戦争RPG(公称)である。18禁。初代『Rance』の発売が1989年で、約30年もの年月を経て完結となった。

物語世界

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人類は大幅に劣勢で、滅亡間近である

この1000年ほどの間、先代魔王ガイの命令によって魔物たちは人類に干渉しないかたちで共存していた。魔物たちはその気になれば人類など軽くひねり潰してしまえるほど頑強な種なのだが、人間出身の魔王であるガイはいたずらに人類を滅ぼすことを善しとしていなかったのである。
ところが約8年前、その魔王ガイもついに討たれる。魔王としての任期を終えた(すなわち不死性を失った)ガイはその魔王の力を「継承」すべく異世界*1から中学生・来生美樹を攫ってきたのだが、その美樹を奪還すべく同じ世界からやってきた小川健太郎に敗れたのだった。
魔王の「継承」がうまく行かず、来生美樹はその力に目覚めないまま小川健太郎と共に行方不明となった。魔王の腹心である「魔人」達は、魔王ガイの遺志を継いだ「人類共存派(魔人ホーネット派)」、そしてガイ以前の悪辣な魔王の時代を良しとする「人類殲滅派(魔人ケイブリス派)」に別れ、内戦状態となった。
そして『ランス10』に至り、ついにホーネットはケイブリスに囚われ、人類殲滅派の勝利という形で魔界の内戦に終止符が打たれた。ケイブリスはすぐさま軍を再編し、人類に対して全面戦争に打って出た。
人類の未曾有の危機にあってなお、それぞれの国家は権利を主張して足並みが揃わず、緒戦は有効な反撃ができないままの大敗北となった。そこで、これまでの冒険で人類の王族・代表者すべてに知己と信頼を得ていたランスが人類軍の総司令となり、魔物との最終戦争に打って出ることになった。
だが人類側に残された時間は多くない。力で劣る人類は一年とかからず魔物の軍勢に殲滅されつくしてしまうだろうし、人類の死亡率をトリガとして魔王を殺せる力*2すら得られるという「勇者」はついに狂気に囚われ、己の手で魔王を殺すべく、なんと人類の死者を増やすよう暗躍し始める。次代の魔王・来生美樹は今のところその破壊衝動を抑え込むことに成功しているが、もう長くは持たないだろうことが示唆される。来生美樹に眠る魔王の衝動が目覚めてしまえば、やはり人類は滅亡である。

以上は『Rance 10』に至るまでのあらすじなのだが、主人公ランスの初代『Rance』から『Rance IX』に至るまでの冒険についてはほぼ触れていない。それぞれに十数人、あるいは数十人という単位で登場してきた人類側のキャラクタが一同に会するさまは、あるいは『水滸伝』のようですらある。30年にも渡って煮詰められてきたランスの世界は、その時間に違わぬ強度と濃度を持っているのに、大雑把で、ふざけていて、そして途方もなく魅力的だ。そんな世界の一癖ある面々が集合し、そいつらに負けないほど癖の強いランスの指揮のもと人類の最終決戦に臨んでいく。これは30年に渡って続くシリーズの集大成であり、最上級のエンターテイメントである。

システム

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アリスソフトのゲームに違わずかなり独特なシステムを積んでいるが、基本的に

  1. 国家ごとのリーダーを選出し、部隊に配置する
  2. それぞれのリーダーが持つスキルを駆使し、戦う

だけで話は進んでいく。総勢数百人にも及ぶ仲間はそれぞれ2つのスキルを持っており、それが強い者も弱い者も、あるいは一般兵のようなモブも混じっているが、いくらかのカードの入手はランダムになるため、ある程度手札の中でやりくりしていく必要はある。

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管理すべきリソースは基本的に部隊のことだけで、全体的に直感的に進められる。戦闘の難易度は初見だと厳しく、ギミックを織り込んでいればある程度楽になるようになっているが、戦闘に敗北してもリトライは容易い。シンプルだが歯ごたえのある好バランスである。ただし意図的なものかは不明だが味方の使う状態異常が異様に強く、困ったら相手を毒にしてしまえば何とかなる。「戦闘力は低いが相手を毒にする確率が高い」という一見サポートのようなメンバーは、ランダムに左右されず序盤で手に入る。

お話

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ランス達の戦いの結果、あるいは選択の結果によりエンディングが分岐する。守るべき人類が滅亡してしまえば終わりだし、戦争にけりをつけず逃げ出しても終わりである。あまりにも強すぎる敵を相手にエンディングすら迎えられないこともあるかもしれない。この手のゲームにありがちな「2周目にパラメータ引き継ぎ」というものは無いが、たどり着いたエンディングの数に応じて次周以降でいくらかのボーナスは付与されるため、周回を重ねていればいずれはベストエンディングとされるAエンドにたどり着ける。
そして特定の条件を満たしたうえでAエンドにたどり着くと、真の最終編がアンロックされる。その結末はもちろんプレイヤーの手で確かめて欲しいのだが、筆者は達成感と充実感に包まれ、ちょっとした喪失感があり、そしてこのゲームをさらに周回する気力を失ってしまった。残るのは「ありがとう」という気持ちだけである(変なレビューだ)。

実のところ筆者もシリーズすべてを通して遊んだわけではないのだが、本作のシナリオは全体的に『戦国ランス(ランス7)』で起こった事件から派生する形で繋がっており、いきなり本作から始めても登場人物の行動がよくわからないかもしれない。従って可能なら『戦国ランス(ランス7)』からでもプレイしておくことを勧めたい。ゲームシステムがすべて異なるので飽きはこないはず。
なお本作の原型ともいえる『鬼畜王ランス』は現在フリーとなっており、簡単に入手できる。20年も前のゲームなので今では多少古臭い感じはするが、中年のゲーマーなら誰でもプレイしたことのあるアダルトゲームの金字塔なので、興味があったら遊んでみるのも良いかもしれない。今では光の当たることの少なくなったアダルトゲームであるが、ランスシリーズを通してその歴史の一端を垣間見るというのも一興だろう。

*1:我々が住んでいるこの現代によく似た世界

*2:人類の50%が死亡することでこの力を得られる

Ragnarok Clicker

Ragnarok Clicker』はPlaysaurus社が開発、Gravity Interactive社がパブリッシングしているクリッカーゲームである。steamにて2016/08/04より配信中。基本プレイ無料。

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トップはよくわからない画像ではあるが…

システム

クリッカーゲームである。2013年頃流行した『Cookie Clicker』を覚えているプレイヤーも多いだろう。Playsaurus社は2015年にクリッカーゲーム『Clicker Heroes』を配信しているが、この『Ragnarok Clicker』はほぼそのスキンだけを『Ragnarok Online』のものに差し替えたものである。

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指が折れるまで連打しろ!

ゲームプレイ

言うまでもないが、そもそも『Ragnarok Online』の50%はクリックでできており、もう50%は見抜きである。『Ragnarok Clicker』は、『Ragnarok Online』からクリックの喜びを抽出したに等しい。懐かしい絵を見ながらクリックを連打するプレイフィールは『Ragnarok Online』と変わらず、全く違和感がない。まったく罪なスキンを被せたものである。
なお、この手のゲームの例に漏れず妙な中毒感があり、クリッカーゲーム未体験であれば時間はどんどん吸い取られていくだろう。ただしこれより以前に『Cookie Clicker』に時間を吸い取られたプレイヤーは、飽きるのも早いかもしれない。クリッカーゲームが最後にもたらす虚無感を知っていれば尚更である…。

アズールレーン

アズールレーン』は日本国内で9/14よりiOS/Androidで配信されているオンラインソーシャルゲームである。開発は中国のManjuu社とYongshi社、日本版運営はYostar社。ジャンルはシューティングゲーム

システム

ソーシャルRPG的な装備やキャラクタの強化を踏まえつつ、戦闘をいわゆる横スクロールシューティングゲームにしたハイブリッドである。キャラクタはそれぞれ攻撃力や防御力、ライフに加えて固有のスキルを持っており、これらを最大6人まで編成して戦闘に挑む。駆逐は移動速度が早く、重巡洋艦は火力が高く、空母なら弾消しも兼ねた全体攻撃もできる…などキャラクタのクラス自体もそれなりに豊富なのだが、さらに同クラス内でもキャラクタ毎に魚雷が得意な者、メインショットを連射する者、回避が得意な者、攻撃ついでにパーティを回復できる者など様々である。

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編成画面。前衛と主力で配置できるクラスが異なる

アーケードライクなシューティングゲームのように弾幕に触れて一撃死ということはないが、キャラクタは隊列を組んでおり当たり判定は大きく、またほぼ回避できない密度の弾幕が飛んでくるためキャラクタをしっかり鍛えることが第一となる。敵弾も、見ていればほぼ避けられるものの当たると痛い魚雷、放っておくと後衛にダメージが出てしまう自爆挺や航空機などなかなかバリエーションに富んでいるため、ステージがほぼ単調な海であることと裏腹に、画面から受ける印象はなかなか派手で忙しい。時にはダメージエフェクトの乱舞で何が起きているかわからないこともあるが…。

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戦闘画面。ちなみに中央の白いものは「煙幕」スキルで、中にいると回避力が上がる

内容

第二次世界大戦を下敷きにしつつ、艦船を擬人化(女体化?)したキャラクタ達の内部抗争、あるいはそんなキャラクタ達とSF的な超科学力を保有する勢力「セイレーン」との戦いがそれなりに描かれはするのだが、今のところフレーバー程度に留まる。事実上、同じ敵を倒しながらキャラクタを強化し、強化しては次の敵を倒し続けるハックアンドスラッシュに近いスタイルなのだが、豊富なキャラクタと多岐にわたる強化箇所により意外にも飽きが来ない。筆者もつい心のままに周回してしまった。

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一枚絵もそれなりに用意されており、力は入っていると思われるが…

非同期のPvPも用意されているが、プレイヤー側に有利なbuffが掛かっているため、同格の相手の場合負けない。挑まれた方には負けてもデメリットがないので、わざと(時間をかけずに)負けるよう弱い編成にしているプレイヤーもかなり存在する。当然メタも存在するのだが、現状ほぼロイヤル編成と呼ばれる編成の一強で、ここに関してはあまりバランスが良くない。今後の調整やキャラクタ追加に期待しておきたいところでもある。そのようなPvP、他プレイヤーとのチャット機能や、今のところほとんど意味のないフレンド/ギルドの機能を除けば、基本的に一人でコツコツ進めていくタイプのゲームである。
キャラクタは「建造」と呼ばれるガチャ、あるいはイベントやクエストの報酬として入手していくが、ガチャに関しては出てくるキャラクタの種類があまり多くない*1ため、毎日もらえる資材で適当にやっていくだけである程度は揃ってしまう。ガチャに関してはそうだが、他の人よりも多く遊びたいならお金を払って下さい、と言わんばかりの集金方式で、各々で燃料*2をうまく節約したりしているようだ。なおレアリティの高いキャラクタは強力なのだが、戦闘のたびに燃料を多めに消費するため、結果的に戦闘回数が減り、成長速度がどうしても遅くなる。よくできている。

育成ゲーム

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「ケッコン」もあり。いいのか。

ソーシャルゲームではお馴染みの「キャラを育てるゲーム」であるが、『アズールレーン』に関してはあまりストレスもなく、戦闘もなかなか楽しい。近年は『Fate/Grand Order』をはじめ一人でコツコツやっていくタイプのソーシャルゲームが盛り上がり始めているが、『アズールレーン』に関してもその系譜であると言えよう。フレンド機能すら殆ど意味が無いところはだいぶ割り切った感があるが。
システムの追加や改修はかなりの頻度で行われており、さらには日本版で先行実装されるイベントなども行われ始めているため、コンテンツ的になかなか勢いがある状態ではある。ソーシャルゲームは大規模なPvP/GvG型のものが多く存在するが、それらに飽きがきた場合は『Fate/Grand Order』などとともに、『アズールレーン』も選択肢に加えていいだろう。

*1:特に最高レアリティのSSRは10種しか存在しない

*2:他のソシャゲで言うところの「スタミナ」が近いか

ドラゴンナイト5

ドラゴンナイト5』は2017/07/13よりDMM Gameで提供されているオンラインソーシャルゲームである。ジャンルはRPGということになるが、この手のRPGといえばハックアンドスラッシュ型の周回ゲームを指す。前作にあたる『ドラゴンナイト4』のオリジナル発売日が1994年なので、実に23年ぶりの新作ということになる。

新規性に欠けるシステム

ソーシャルゲームは既にいくつものゲームが出て、あるものは残り、あるものは消えてしまったジャンルであり、後発になればなるほど新規性・独自性が求められるとされているが、『ドラゴンナイト5』にはそれらが欠けている。サイドビューの戦闘画面、贈り物および報酬システムなど全体的には『Flower Knight Girl』を下敷きにしていると考えられるが、既に先行している、ゲームサービスが続く中でさまざまに拡張されてきた他のゲームと比べてもコンテンツに欠け、できることが少ない。現状のままでは新しく始める動機に欠けると書かざるを得ない。

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メイン画面。基本的にクエストしかない

普段できることは「クエスト」と「ハーレム」である。クエストは説明不要だろうが、ハーレムはキャラクタの好感度を上げて「ご褒美シーン」を見るためのメニューである。ただしハーレムで得られるアイテムにはゲーム内で強力な装備/キャラクタと交換できるものがあり、「ご褒美シーン」に興味がなくとも必須である。基本的にはクエストとハーレムだけで進む。
右上にある「強敵」は一見Raidのようだが、このゲームにRaidは存在しない。強敵はクエストを回しているとランダムで挿入される体力無限のボスで、ダメージを稼ぐほど報酬が良くなる…とされているが、あまり面白みはない。

基本システムとバランス

イベントで手に入るキャラが強くガチャで手に入るキャラが弱い。正しくはガチャから超低確率で排出されるSSRキャラクタもその場では使い物にならず、同じキャラクタを数枚引いて「限界突破」で重ねることで初めて戦力になる。排出率1%と設定されているSSRは引くだけでも困難で、それを同種で数枚引くのもあまり現実的ではない。それに対してイベント産キャラはイベントを周回していれば「限界突破」が可能で、強い。結果的にガチャを引く意味が失われている。ただし、イベントを回すにもそれなりの戦力が必要なので、最初のうちは何度か回して最低限の戦力を整える意味はある。

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左がガチャ排出キャラ、右がイベント産キャラ。

戦闘もシンプルで、「攻撃」と「必殺」しかない。いちいちボタンを押していられないので「オート」で回すのが良いが、高難易度のクエストは必殺技のターンを揃えて一気に撃破しないと危険な敵がいたりするので、そのようなところは手動でないと失敗する。

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戦闘画面
いずれにしても戦術の幅が狭く、高難易度を手動で回すよりオートでそこそこのところを周回するほうが楽なので、そちらをつい選んでしまう。オートであれば他のこと(Blogを書くとか)をしながらでも回せるので、やはりオートを選びがちではある。プレイヤーのやる気にも依存するが…。

なおアップデートにより頻度は減りつつあるが、信じられないほどエラーで止まる。クエスト中にエラーが起きると再開もできずやり直しである。基本的なレスポンスにも難があり、ローディングや画面遷移はとにかく「重い」。

総評

オールドゲーマーになじみのあるタイトルの続編として2017年にサービスが開始した…とは信じられないほどの出来の悪さである。これが『ドラゴンナイト』を冠していないければ1時間もしないで投げていたかもしれない。コンテンツの少なさ、致命的なエラー、バランスの悪さが今後のアップデートでどの程度良くなっていくかも不透明で、もしかしたら本作も、今まで消えていった有象無象のタイトルのように短命に終ってしまうのかもしれない。それも一興だろう。エルフの残り香までも看取ろうという物好きのためのゲームである。
ただしキャラクタの可愛さは低レアリティでもそこそこのクオリティが維持されており、「ご褒美シーン」が目当てならばそんなに悪くないかもしれない。エラーの頻度自体は減っているし。

ファイアーエムブレム無双

概要

ファイアーエムブレム無双』はコーエーテクモゲームスから2017/09/28に発売されたアクションゲームである。対象機種はSwitch/3DS。筆者はSwitchでダウンロード版を購入した。

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近年のFEの顔になりつつあるルキナ

ファイアーエムブレム』のこと

ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』が1990年に発売されてから今日まで27年、家庭用ゲーム機向けで実に16本*1ものタイトルが発売されている長寿シリーズである。その登場キャラクターは敵味方合わせて1000人近い。これらを網羅せよというのも酷な話ではあるが、『ファイアーエムブレム無双』の参戦作品として主に直近2作の『覚醒』『if』および初代『暗黒竜と光の剣』から採用されている。シリーズの大部分――とりわけ筆者を熱狂させた『聖戦の系譜』――が採用されていないのは悲しい話だが、『ファイアーエムブレム』シリーズにまつわる事情、すなわち『覚醒』で終わるかもしれなかったという事情を鑑みてしまえば、納得せざるを得ないところでもある。

山上

当時の営業本部長の波多野(信治)さん(※27)から、
「『エムブレム』シリーズは、数字があまり出ないから、
 これが最後だぞ」と言われて、メンバーにも
「もうこれで終わりと言われたから、
 悔いのないように、やりたいことを全部詰め込もう」
と言って、「おれはこれがやりたい」
「自分はこれがやりたい」というのを積み上げていって、
その結果できたのが『覚醒』だったんです。

社長が訊く『ファイアーエムブレムif』|ニンテンドー3DS|Nintendo

結果的に『覚醒』は順調に売上を伸ばし、『if』も好調。『ファイアーエムブレム』はここで息を吹き返したと言ってもいいだろう。いちファンでしかない筆者が売り上げのことを気にしても仕方がないのだが、納得の行く『理由』を導き出せるのはこのシナリオだけである。

『無双』のこと

一方の『無双』は、『ファイアーエムブレム』と比べれば歴史は浅いものの、2000年*2から脈々と続く人気シリーズである。我々のような中年ゲーマーよりもう少し下の(すなわち、初めて触ったゲーム機がプレイステーションであったような)世代にとっては共通言語とも言えるシリーズで、こんにちではどこでも通用する「無双する」という言い回しの語源でもある。コーエーの代表作である『三国志』・『信長の野望』を由来とする『三國無双』/『戦国無双』シリーズを柱とし、それらを融合させた『無双OROCHI』シリーズ、あるいは『無双スターズ』もあるが、中期から『ガンダム無双』シリーズ、近年でも『ワンピース 海賊無双』シリーズや『ベルセルク無双』などコラボレーションにも精力的である。2014年には『ゼルダ無双』をリリースしているが、今回書いている『ファイアーエムブレム無双』は、この『ゼルダ無双』の流れを汲むものである。
こんにち、既に『無双』は単一のシリーズを指す言葉ではなく、一種のジャンルとして認識されている。無双の名前でなくとも『NINETY-NINE NIGHTS』は無双であったし、『戦国BASARA』も無双であった。であるので、これらを「攻撃ボタンをスカムしているうちに終わるゲーム」で終わらせてしまうのは野暮であろう。でも実際はそうやって終わるんだろうなと考えていた筆者の思惑は、良い意味で裏切られることになる。

ゲームプレイ

ゲームの根幹は『無双』のそれなので、確かに攻撃ボタンをスパムするゲームではある。複数のキャラクタを使い分けるという意味では『戦国無双クロニクル』シリーズに近いと言える。そこに一捻りを与えてくれるのが『ファイアーエムブレム』に由来する3すくみのシステムである。一応書いてしまうと、3すくみは「剣は斧に強く、斧は槍に強く、槍は剣に強い」という原則を基本とする『聖戦の系譜』以降のシリーズで採用されているシステムである。魔法など遠距離武器に関してはシリーズ毎に扱いの差異があるが、本作には暗器が存在しないため、『新暗黒竜』ないし『覚醒』の3すくみが採用されているとみてよいだろう。

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出撃前画面。ここでまずおおまかな方針を決定する

各マップは剣の敵が多いとか斧の敵が多いとかという大まかな傾向があるため、これに合わせてキャラクタを出撃させ向かわせる。戦闘中も敵の増援が出たり、増援を召喚する魔道兵が出てきたりするので、味方に細かく指示を出しながら対応していくというわけだ。

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戦闘システムは無双のそれ。年に一度程度なら楽しい

正直なところ、わかっていて不利な味方を出撃させているのでなければ、有利な相手に有利な相手をぶつけていくだけなので、頭を使う場面というのはあまりない。しかしながら、指示を出さなければ味方は本当に適当な動きしかしない(いきなり敵本拠地に突っ込むなど)ため、絶えず味方の陣地や敵の配置などを確認しながら指示を出し続けていくことになる。敵のネームドはそこそこ強く、AIに任せていると時間がかかったりするので、その場合は操作キャラを切り替えて対応する。敵のネームドが2拠点に攻めてきたら片側にAIを集中させて操作キャラでもう片方を対処…など。これがゲームプレイに適度な忙しさを与えてくれて、通して程よい緊張感を維持したまま遊ぶことができる。

キャラクタ

本作は『暗黒竜と光の剣』『覚醒』『if』を中心にキャラクタが登場していると先に書いたが、他に『echoes』のセリカと『烈火の剣』のリンが登場している。彼女らはシナリオモードに絡んでくることはない、いわばボーナス的な扱いなのだが、まずは出たことを喜ぶべきだろう。セリカは現時点での最新作であるという理由がわかるが、リンについては理由が2017年初頭に行われた英雄総選挙(『ファイアーエムブレム ヒーローズ』英雄総選挙 結果発表)以外に考えられず、つまりこのままシリーズが続いてくれればアイクやロイ、ヘクトルが出る可能性が高いと思われるからだ。筆者の愛した「フォルセティを持ったアーサー」は…290番目だが。まあいいではないか。
本作のキャラクタはよく喋り、よく表情を変え、よく動き、非常に魅力的なので、このクオリティでかつての彼らを蘇らせてほしいと考えるのは仕方がない。幸いなことにゲームそのものが非常に良い出来で、存分にキャラクタを愛でることができるのである。

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貴重な歩兵の斧使い。重要度の非常に高い妹

バランス

最後にバランスに触れないわけにはいくまい。本作は上で述べたように3すくみを採用しているが、上で触れなかった弓・魔法・竜石は3すくみの外の存在として、どの兵種に対しても強い補正が働かなくなっている。しかしながらバランスは「3すくみで有利に立つ」ことを前提として取られているようなので、有利に立てない弓・魔法・竜石のキャラクタの優先度がどうしても低い。
さらに言えば剣の多さである。

種別 人数
10
3
3
3
魔法 3
竜石 1

弓と魔法は使いづらく、斧は素直な歩兵がリズのみだし、槍に至っては3人ともペガサスナイトである。『ファイアーエムブレム』は全体的に神剣をもつ王家の者(ロード)が悪い竜を倒すというベースラインを大きく外さないため、何も考えなくても、あるいは最大限考えても剣が多くなるのは仕方のないことなのだが、それにしてもそれ以外の扱いがあまりよくない。登場を望まれるとすれば槍使いの歩兵、すなわち『聖魔の光石』のエフラムあたりだろうか(『if』の槍使いオボロのモデルは既にあるようだが…)。
手触りが非常によいだけにこのあたりの偏りが気になるもので、このあたりはDLC、あるいは続編で綺麗に解決されることを願いたい。

*1:幻影異聞録♯FE』は含んだが、『ヒーローズ』や『スマブラ』、『PXZ2』は含んでいない

*2:事実上の初代といえる『真・三國無双』の発売日